遺言執行者の選任と遺言の執行
遺言執行者とは
遺言が効力を生じるのは、遺言をされた方が亡くなられた後です。ですので、生きている誰かが遺言をされた方が遺した意思を実現する必要が出ています。
このように、遺言の内容や趣旨に沿って遺言内容を実現する人が、遺言執行者です。
遺言執行者は、相続人の代理人として、遺言に書かれた内容を具体的に実現するように行動します。
なぜ遺言執行者を選ぶのか
遺言は強力な効果を持っていますが、遺言が効力を生じたからと言って、ただちに遺言内容が実現されるものではありません。例えば、遺言でCという人を認知したとしても、それだけでは認知の効果は生じずに、誰かがCを認知するという内容の認知届を提出しなくてはなりません。また、遺言である財産をDさんに遺贈した場合、遺贈されたことをBさんが他の方に主張するためには、Dさんへの移転登記をしなくてはなりません。
このように、遺言内容を実際に実現するためには、遺言執行者は欠かすことの出来ない存在です。
また、遺言執行者を選ぶことで、相続人たちの間で揉め事が起こるのを防ぐこともできます。
相続の際には相続人の間で利益が対立することが多く、相続人全員の協力が得られない場合があります。このような場合に、遺言執行者を決めておけば各相続人に対して中立公平に手続を進めることができますので、最終的にはスムーズな相続手続を行うことができます。
遺言執行者の選び方
遺言執行者の選び方は、遺言によって選ぶ場合と、家庭裁判所が選ぶ場合の二通りがあります。
遺言で選ぶ場合
遺言執行者は、遺言でしか選ぶことは出来ません。ただし、遺言であれば特に指定はありません。1人のみの選ぶこともできますし、複数の人を遺言執行者に選ぶこともできます。
遺言執行者になれるのは、未成年と破産者を除いた方です(民法1009条)。相続人でも構いませんし、会社や社団などの法人も遺言執行者になることができます。
ただ、手続をスムーズに進めるという点では、信頼のできる専門家に任せるほうが安心です。
家庭裁判所が選ぶ場合
遺言執行者がいない場合、またはいなくなった場合には、相続人などの利害関係人は、裁判所に対して遺言執行者を選ぶことを請求できます。
遺言執行者がいない場合にはもちろんですが、選んだ遺言執行者が就任を拒んだ場合や遺言執行者が途中で亡くなってしまった場合にも、この請求をすることができます。
遺言の執行
遺言執行者が決まると、いよいよ遺言の内容を具体的に実現する手続がスタートします。遺言執行者はまさに遺言内容の執行のために職務を行いますので、そのために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するなど、とても大きな権限を与えられています。
反面、相続人は遺言執行者のジャマをすることは出来ません。相続人が遺言の対象となった財産などを勝手に処分することは禁止されますし、これに反して行われた行為は無効です。
具体的には、遺言執行者は以下のような事を行います。
- 相続人や遺贈を受ける予定の人へ、遺言執行者に就任したことを知らせる通知を出す
- 相続財産のリストを作成し、相続人らに渡す
- 遺言で認知があった場合、市町村役場に認知届を出す
- 相続人を廃除する旨の遺言があった場合、家庭裁判所に廃除の申立てをする
- 遺言の内容に従って、不動産に相続登記の手続を行う
- 遺贈を受ける予定の人に対して、遺贈を受けるかどうかの意思を確認する
- 遺言に従って受遺者へ財産を引き渡す
このように、遺言執行者の手続は遺言内容を実現するための非常に重要な部分です。