社会のために寄付をしたい・・・
このような場面でお悩みではありませんか?
Oさん(81歳)は、夫婦二人暮らしでしたが、夫は数年前に亡くなり、お一人で暮らしてらっしゃいました。
ご夫婦に子どもはなかったのですが、お二人とも教師をしていたことから、旦那様が亡くなられる前にはお二人で、亡くなられてからはお一人で地元の教育ボランティアとして活躍され、充実した日々を送ってらしたようです。
Oさんには、土地や建物の他、山林や預金などの財産があります。
Oさんは自分が亡くなった後、今ある財産を未来の子どもたちのために使って欲しいと考えており、どうにか出来ないのものか、ということで相談にいらっしゃいました。
相続人がいない場合の処理
亡くなられた方に相続人がいない場合もしくは明らかでない場合には、そのままにしておくと誰も管理しない財産が宙に浮いてしまいます。
そこで、法律では「相続人の不存在」という手続を定め、まず相続人を探し、それでも相続人が見つからない場合には、相続財産を国に帰属させることにしています。
ただ、本当に相続人がいないかどうかは、再度確認しなければなりません。場合によっては甥や姪が相続人になることもあるからです。まずは戸籍謄本などを確認し、相続人がいるかどうかを確認するようにしましょう。
また、財産を相続人以外の第三者に譲る場合には、遺言をしなければなりません。譲る対象は慈善団体などでもよく、個人である必要はありませんが、遺贈は放棄することもできますので、予め遺贈を受ける団体の同意を得ておく必要があります。
さらに、相続人がいない場合には、遺贈の実行や葬儀の執り行い・埋葬などについて、遺言執行者を選んでおいたり、死後事務を委任するなどの対策をしておく必要もあります。
一つの解決策
相続人の確認をする
まず、Oさんに戸籍を確認してもらい、自分の兄妹やその子どもがいないかを確認してもらいました。兄妹が亡くなっている場合には、その兄弟の子もOさんの相続人になりますが、兄妹の孫は相続人にはなりません。今回はOさんにはお兄さんがいましたが、お兄さんもそのお子さんも既に亡くなっており、相続人がいないことが確認できました。
遺贈の同意をとって遺言を作成
次に、相続財産を寄付しようとする教育普及を目的とする団体に話を持ちかけ、寄付を受け取ってくれることについて同意を得ました。また、受け取った財産は教育のために使用するようお願いしました。
その後、相続財産をその団体に遺贈するよう、遺言を作成しました。
遺言執行者の選任と、死後事務の委任
さらに、日頃から親交のあった司法書士を遺言執行者に選び、また自分の死後、葬儀や埋葬などの手続を進めることをお願いしました。その方への報酬や葬儀費用などは、同じく相続財産の一部を遺贈して、その中から支払うようにしました。
寄付を受け取った団体では、土地建物の売却資金で山林を整備し、里山として保存・維持することで小学生の自然体験活動など校外学習に役立てているようです。