家族のうちに財産を遺したくない人がいる…
このような場面でお悩みではありませんか?
Vさん(66歳)は奥さんのWさん(66歳)と孫のXさん(5歳)の三人暮らしです。Vさん夫妻にはYさん(故人)とZさん(32歳)の二人の子どもがいましたが、Yさんは不慮の事故で他界しています。現在はYさんのお子さんであるXさんを引きとって、Wさんと面倒を見ていました。
Zさんは若い頃から派手な生活を好み、家に全く寄り付かないばかりか、たびたびVさんやWさんに暴力をふるい、遊びに使うお金をせびっていました。成人した後も別々に暮らしていますが、月に一度ほど金の無心をしてくるそうです。
Vさんには住んでいる土地建物の他、先祖から受け継いだ農地が財産としてありました。
Vさんは、そのままZさんに土地や田畑が相続されれば、たちまち売り払ってしまって何も残らなくなってしまうのでは…と考え、それならば孫のXさんに財産を相続させたいとのことで相談にいらっしゃいました。
相続人から除外する
自分の家族であっても、「この人には相続させたくない。」と思う人がいることもあります。法律上は親子ですが暴力を振るわれたり、反りが合わない場合には、自分の築いてきた財産を遺したくない、と考えることがあってもおかしくはありません。
そこで、遺産を遺したくない、と考える推定相続人は、「廃除」をして相続人から除外することができます。
この廃除とは、「被相続人(Zさん)に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」に、Yさんを相続人ではなくする制度です。遺言で廃除もできますが、家庭裁判所への請求が必要になりますので、遺言執行者を選んでおく必要があります。
ただし、相続人の廃除ははじめからその人を相続人ではなくする、というとても大きな効果を持ちます。「なんだか気に入らないので廃除したい。」ということは出来ませんし、実際に虐待などの証拠がない場合には廃除が認められないこともありますので、注意が必要です。
一つの解決策
相続人から廃除する
やはり、今回はZさんを相続人から廃除することにしました。家屋と田畑が相続財産の殆どでしたので、Zさんの遺留分を侵害せずに、土地や建物などをZさんに渡さないことは難しいと考えたためです。
そこで、Zさんを相続人から廃除する旨と、廃除の理由(虐待)を詳しく遺言に書くことにしました。こうすることで、遺言執行者がどのような理由に基づいて、廃除を請求すればよいかが分かります。
また、虐待の事実を示すような通院記録を保管するようにしておき、その保管場所も遺言執行者がわかるようにしておきました。
未成年後見人の指定
次に、現在VさんがXさんの未成年後見人でしたので、遺言でWさんを未成年後見人に指定しておきました。
相続させる旨の遺言
さらに、相続財産の全部をXさんに相続させる旨の遺言をしました。この遺言ではもう一人の相続人であるWさんの遺留分を侵害することにはなりますが、事前にWさんとは打ち合わせずみなので、問題はありません。
遺言執行者の指定
最後に、遺言執行者として、懇意にしている方を指定しました。